さよならベスパ



以前、VESPA買いませんか?というエントリーを書いたところ、とある方(Hさん)から購入希望のメールを頂いた。


何度かメールのやり取りを繰り返し、特に大きなトラブルなく話はまとまった。
で、先週の金曜に売却完了。


何事においても「ホンモノが好き」というHさんは、以前(車族だった頃)はローバーミニに乗っていたとのこと。VESPAについても色々勉強しておられたようで、「大切にします」と言って下さった。


手続き関係も、バイク屋さん顔負けのスムーズさで、すべて準備して頂いた。ぼくは言われるがままに署名・捺印するだけ。


今回の取引は、ぼくにとっては非常に良いものだったと言える。
相手にもそう感じて欲しくて、色々とオマケを付けたりしたけど、どうだっただろうか・・・


〜〜〜〜以下回想〜〜〜〜


Hさんが前に乗っていたローバーミニも同じだろうが、VESPAもなかなか個性的なバイクである。
(以下、PX FL2の話。他のは知りません)


プラスチックやファイバー製が一般的なモーターサイクル界において、スチール製ボディにこだわり、チェーンの不要な動力一体型後輪や剛性・メンテナンス製を向上させたスチールモノコックボディ、サイドカバー一体型のケーブルレスウインカーなどは、他のマシンには見られないVESPAのユニークな特徴だ。


特に初めてサイドカバーを本体から外した時は、度肝を抜かされた。
サイドカバーにウインカーが付いているのに、バッテリーから伸びるケーブルがどこにも見当たらないのである。
このウインカー、一体どうやって光ってるんだ?
答えは、鉄製のボディを導線として電流が走り、ウインカーに電力を供給しているのである。この構造、ちょっと驚きませんか?


VESPAの構造は、全体としてこのノリで、ものすごく機能的かつシンプルに作られている。それは、バイクを「デジタルなメカ」としてではなく、目で見て手で触れる「仕組みを持った機械」たらしめており、多くのVESPA乗りが単なる足以上の愛情を抱く要因でもある。


考えられる故障要因をヘッジするためのコンピューターシステムは、VESPAにはない。だから、正直良く故障する。でも、構造が論理的で2次元的でシンプルなため、修理は難しいものではない。良くも悪くも、手のかかる田舎のやんちゃ坊主的な性質がVESPAの魅力だ。


また、前述したようなある意味無骨な特徴に加えて、VESPAは非常に高いデザイン性を実現している。
オードリーヘプバーン主演の「ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版 (初回生産限定版) [DVD]」をはじめ、伝説的なモッズ映画「さらば青春の光 [DVD]」(元題:Quadorophenia)や、「探偵物語 DVD-BOX」において象徴的なモチーフとしてVESPAが使われているが、ここまで世界的・普遍的な評価を受けたメカニカル・デザインがあっただろうか。

Vespa98(フェンダーライト)に始まり、
GS(Grand Sport)、ETシリーズを大ヒットさせ、
様々なモデルチェンジを経て、
日本ではPシリーズ・Vintageシリーズが大ブレイク


愛される理由は、「構造」と「デザイン」の普遍的両立。


遠ざかるHさんの背中を見送る心境は、何とも言えないものだった。


またいつか、VESPAに乗れる日が来るといいなあ。


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