過去の書評:ジョン・ダニング/3作品



古本屋には、宝が眠っている。
しかし、宝が姿を現すのは、ごく稀だ。
読書家にとって、そんな「宝」との邂逅は、贔屓作家の新刊に匹敵するほどの価値を持つ。「宝」との出会いは、更なる魅惑的読書体験の扉を開いてくれる。


ジョン・ダニングは、ぼくにとってそんな作家である。


死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

★★★★★→読書家必読!です
実はこの本、ブックオフジャケ買いと言うかタイトル買いしたものだったのですが、意外や意外、なかなか面白かったです。

ミステリというジャンルの醍醐味である「謎解き」も勿論しっかりしたもので面白かったのですが、稀覯本の世界という物語設定が非常に興味深く、実に読み応えタップリ、の本でした。

文体もかなり特徴的で、ミステリというよりハードボイルドを思わせるその雰囲気は、一般の探偵小説とは確実に一線を画していると言えます。

文中にこれでもかと言うくらいに様々な本が登場しますので、更なる読書欲を刺激してくれること請け合いです。
読書家必読と言っても言いすぎではない、と思います。

同作家の「幻の特装本」という本も既にGETしてありますので、次はコイツをやっつけようかと考えています。

物語内に出てくる掘り出し屋ではないですが、良い本と偶然巡り合うってのは、本当に素晴らしいことですね。

(2003/6/28)



幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

★★★★☆→相変わらずの読み応え。
前回の「死の蔵書」の続編。
やはり、この作家、ただ者ではないです。

すごい読み応え。
ミステリーというジャンルで区分けするのが惜しいほど。
何というか、一度読んでみてとしか言えないですね。
とりあえず、日本のただひたすら情緒的な小説ではまず体験できないこの圧倒的な重厚感は、何なんでしょうか。

今回も本についての蘊蓄が死ぬほど出てきますので、読書家にはたまらない仕上がりとなっております。はい。

(2003/7/15)



封印された数字 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

封印された数字 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

★☆☆☆☆→ダイヤだと思ったらガラスだった?
ミステリ、というよりは、アドベンチャー的要素の強い作品です。
過去に催眠実験の被験者であった主人公が、その時に刷り込まれた記憶を頼りに、洞窟の奥の金塊を探しに行く、という粗筋です。
実はこの作品、「死の蔵書」なんかよりは随分前に書かれた再版ものらしいのですが、内容的にはイマイチと言わざるを得ません。

催眠実験の内容や、それを伏線として登場する謎の数字(タイトルにもなっている)の意味からして、贔屓目に見ても読者の興味をひくほどのものではありません。
やりようによっては魅力的になり得る登場人物達も、なんだかそれぞれ中途半端で、どうにも感情移入しにくいんです。
前半のかなりの部分を費やす少女とのドライブシーンも、特に伏線らしい伏線とは言えませんし、キーパーソンである別れた妻(そして生き写しの娘)に至っては、存在感まるでナシ、です。

結局最後まで集中力を欠いたまま読み終えてしまいました。
冒頭にオマケ(あるいは言い訳)のように注釈されている著者自身の独白文も、はっきり言って何のフォローにもなっていません。むしろ逆効果かも。

なんだかなあ。 同一人物でこれほどまでに出来映えに差があるのも珍しい。
ちょっと騙された気分になってしまいました。

(2003/10/15)



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++ from a.s
++ get slow life,
++ and smile.

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