過去の書評:ウイリアム・アイリッシュ/コーネル・ウールリッチ/5作品
PCのデータを整理していて、以前他のサイトで書いていた書評を見つけた。
久しぶりに見ると、当時の感覚が思い出せてなかなか面白い。
結構分量があるので、暇を見つけてちょくちょくUPしていこうと思う。
一発目は、個人的に一番好きな外国作家から。
- 作者: ウィリアム・アイリッシュ,高橋豊
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/10/01
- メディア: 文庫
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★★★★☆→いわゆる"悪女"のお話
いわゆる"悪女"のお話です。
交際相手紹介所から紹介された女性と結婚することになった主人公の会社経営者が、性質の悪いその女性に利用され、捨てられ、しかし彼女のことが忘れられずに愛を貫き通すという、ある意味現代にも通じそうな、ベタと言えばベタなストーリです。
ストーリーはベタなんですが、アイリッシュ独特の巧妙かつ美しい文章は、ひとたび読み始めると休むことを許してくれません。
ぼくは今まで、翻訳者というフィルターを通してしか読むことのできない外国文学は避ける傾向にあったのですが、アイリッシュの作品はそれでも尚輝きを失うことなく、鮮烈なイメージを与えてくれます。これは、翻訳者の素晴らしい腕前の証明であるだけでなく、何よりアイリッシュ自身の文章装飾が決して小手先のものではないという証です。
アイリッシュを読んでから、ぼくは海外の作品を積極的に読むようになりました。今ではむしろ海外作品を好んで求めるほどです。
現在でも、本屋に行ってまず探す作品はウイリアム・アイリッシュ、あるいは別名義かつ本名のコーネル・ウールリッチです(正直旬ではないのでなかなか見かけないのですが)。
とにかく、忘れらない特別な小説家であることは間違いありません。
皆様も機会があったら一度読んでみて下さい。
ちなみにこの作品、「ポワゾン」という作品名で映画化もされています。
(2003/6/5)
- 作者: ウィリアム・アイリッシュ,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1977/12
- メディア: 文庫
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★★★☆☆→スリル溢れるミステリ。
旅興行から抜け出した漆黒の豹が、人を襲い始めた。
一人、また一人と犠牲者は後を絶たず、警察は暗闇から暗闇へ疾走する獰猛な肉食獣を追い続ける。謎が謎を呼ぶ残虐な殺人劇。クライマックスで明らかになった"豹"の正体とは・・・
スリル溢れるミステリを書かせたら、アイリッシュはさすがに一流です。
装飾豊かな美しい文章世界が、時に激しく、時に冷たく静謐に、読者の感情を煽り立ててくれます。
練られたプロットやストーリーに唸り、文章から浮き上がるビジュアルに感嘆する、一粒で2度美味しいアイリッシュ・ワールドは本作でも十二分に炸裂しています。
(2003/6/12)
- 作者: コーネル・ウールリッチ,高橋豊
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04
- メディア: 文庫
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★★★★☆→ミステリジャンルには括れない作品
愛し合う男女。
ある日の待ち合わせの場所に、彼女は来なかった。
女は、ある旅客機から心無く投げ捨てられた壜に打たれ、命を落としていたのだった。
その事実を信じず、待ち続ける男。
やがて真実を知った男は、復讐の鬼と化して、旅客機の乗客を襲い始める。
彼女を殺したかも知れない相手に神の鉄槌を下しながらも、幻の中で彼女を待ち続ける男。
やがて幻は現実と混ざり合い・・・
名作です。
かの江戸川乱歩をして、「新しき探偵小説現れたり、世界十傑に値す。直ちに訳すべし」と言わせしめたアイリッシュの力量が存分に発揮されたこの作品、さすがに多少の古臭さは否めませんが、個人的には是非一度読んで頂きたい作品です。
この小説も、他のアイリッシュ作品と同様、一概にミステリというジャンルには括れない(括るべきでない)作品と言えます。
男は復讐のために殺人を繰り返しますが、その行為を綴る文章の端々から伺えるのは、紛れもなく純粋で透明な愛の感情です。そういった意味ではラブ・ストーリーとも言えるのでしょう。まあ、ラブ・ストーリーとしては少々痛々しすぎる気もしますが。
その痛々しい愛の感情が昇華するラストシーンは、多少作られ感に過ぎますが、必読と言って良いでしょう。
ちなみに、この作品でも使われている「コーネル・ウールリッチ」という名義は、彼の本名でもあり、ペンネームとして広く知れ渡っている「ウイリアム・アイリッシュ」名義と共に複数の作品に使われています。
(2003/6/7)
- 作者: ウィリアム・アイリッシュ,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/02/19
- メディア: 文庫
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★★★☆☆→さらりと読める作品
朦朧とした意識から覚めた時、そこはまったく知らない場所だった。身に付けているのは知らない服装、帽子に刻まれた自分のものではないイニシャル、失神前後の記憶はない。しかし、 それ以外のすべての記憶はしっかりしている。つい今しかたまで普通に生活していた筈の自分、けれども、何かが違う。まるで、一瞬の間に自分を取り巻く環境がまったく様変わりしているよう・・・
・・・という奇妙な状況から物語は始まります。
主人公のフランク・タウンゼントはその状況を性格に把握しようと奔走しますが、知れば知るほど、自身を取り巻く事実はますます歪になっていき、男の頭はますます混乱していきます。
ん、この辺がギリギリですね。あまりネタバレしちゃうと面白くなくなってしまいますので。
「黒シリーズ」と言われる一連の作品の中でも、結構捻った設定の物語ですね。
推理小説というよりは、サスペンスものといった方が近いかもしれません。ボリューム的にも短いし、特にミステリ好きでなくてもすんなりと入っていけるのではないでしょうか。文学的要素よりは「筋」が際立っているので、アイリッシュ入門編として適当と言える作品でしょう。
全体的に、さらりと読める作品ですが、なかなか面白かったです。
(2003/5/5)
- 作者: ウイリアム・アイリッシュ,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04/30
- メディア: 文庫
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★★★★★→いわずと知れた代表作
ぼくがウイリアム・アイリッシュに初めて触れた個人記念碑的な作品です。
突然殺人の容疑をかけられ、死刑宣告された主人公を救うため、彼の親友が、主人公のアリバイを証明できる唯一の女性を探す物語です。
各章が「死刑執行前 〜日」という章名により時系列で構成され、刻一刻と「その時」が迫りくるスリルを高めます。構成的にはとってもシンプルで、女性に関する手がかりが、各章において浮かんでは消え、というものです。そのようなシンプルさ故に、死刑執行までのカウントダウンが一層浮き彫りになり、ストーリーに格別の疾走感を与えています。
このように、物語にある制限(この場合は時間)を与えて、ストーリーを袋小路に追い込むように展開していくのは、アイリッシュの十八番です。
美しい文章に加えて、薄いナイフでスパッと切るようなラストシーンが、ぼくのお気に入りです。
ある時、これと言った理由はなくふと手に取って、他に欲しい本もなかったので買ってしまったのですが、読んでみて、そのロマンティックな小説世界に完全にやられました。いわゆる「当たり」だったわけですが、こういうのがあるから新規作家の開拓は止められません。
(2003/5/2)
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++ from a.s
++ get slow life,
++ and smile.
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