過去の書評:フィリップ・K・ディック/3作品



フィリップ・K・ディックと言えば、映画ブレードランナーの原作になった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))」が超有名だが、今回UPする書評には含まれていない。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))」は高校生の頃読んでしまったため、内容をおぼろげながらにしか覚えておらず、書評が書けなかったのだ。


同様のパターンは他の作家においてもあり、そのためぼくの書評からは、その作家の代表的な作品だけがぽっかり抜けていることが多い。(よっぽど好きなもの、影響を受けたものは無理矢理思い出して書いてるけど)


ってことで、ディック読むならまず「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))」を読むことをオススメします。文句なしの5つ星なので。



★★☆☆☆→ビートニク系のジャンキー小説
最近SFづいているぼくとしては、ディックを外す訳にはいかないでしょう。骨太なSFを期待して読み始めたのですが、本作品はちょっと違いましたね・・・

これ、SFじゃないです。
どちらかと言うと、純文学。
しかも、ビートニク系の。

要するに、ジャンキー達のトリップ物語な訳です。
まあ、単なるイカれたお話ではなくて、主人公のジャンキーは実は潜入麻薬捜査官で云々・・・ってな感じで、多少捻りはあります。

個人的には、こういうジャンキーの独白小説って、苦手なんですよね。びっしりとページを埋め尽くすタワゴトを追いかけるのが辛いと言うか何と言うか・・・
本作品でも、ジャンキー与太話が満載です。

とは言え、ハッピーでウッキーでラブアンドピースな訳ではなく、結構悲しい物語だったりするんですけど。

(2003/8/20)



高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

★★★★☆→ディックの最高傑作と称される
ヒューゴー賞を受賞した、ディックの最高傑作と称される作品です。

第二次世界大戦で、アメリカではなく日本やドイツ側が戦勝国となった世界を舞台にとした物語。

主に3つの物語が平行して進み、それぞれは別のエピソードでなのですが、「イナゴ身重く横たわる」という一冊のベストセラーが、各エピソードに共通したキーアイテムとして存在しています。
このベストセラーの中身は、もし第二次世界大戦での戦勝国アメリカだったら・・・というもの。

このように、なかなか複雑なお話です。
ストーリー自体も、SFというよりは更に重い空気に包まれていて、かなり読み応えがあります。
エピソードの主人公は、ドイツ人だったりユダヤ人だったり日本人だったりするので、新鮮と言えば新鮮かな。

あと、中国の「易」が重要な小道具として登場します。
いわゆる「外国人が考える日本人」的表現も端々に現れていて、全体的になんか妙な雰囲気のある作品です。

結末・読後感はイマイチ(と言うかすっきりしない)ですが、十分面白かったです。

(2003/9/3)



流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

★★★★☆→傑作!オススメです。
ディックの不条理SFものです。

ある日突然、周りの人間に自分のことを知らないと言われ、公的な記録からもその存在を抹消されてしまった売れっ子司会者の物語。

主人公は、警官に追われながら、どこかに存在する筈の「自分の証明」を探し求めます。不条理な状況に悩みもがく主人公の描写と、彼を追う警官の視点が入り交じり、急ピッチで物語は進んでいきます。

ディック作品にしては、わりと分かりやすく、感情移入もしやすいのではないでしょうか?
お決まりの後半におけるストーリーの破綻も、本作に限っては最小限に押さえられてるような気もします。(でも破綻してる部分もあるんですけどね)

「電気羊〜」なんかに並ぶ、疑いようのない傑作と言えるでしょう。
何より、タイトルがいいじゃないですか。
このタイトルだけで購入の価値あり!というのは言い過ぎかな・・・

(2003/9/5)



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