過去の書評:村上龍・他/5作品
過去の書評の中でも、ある程度ボリュームのまとまったものは出し終えたので、細かいものを幾つか束ねて紹介。
5つ★作品は2つ。
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1978/12/19
- メディア: 文庫
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★★★★☆→村上龍の成分100%!な作品。読むべし
村上龍、衝撃のデビュー作。
今では珍しくなくなった「米軍ベース・ドラッグ・セックス」というテーマですが、当時はとにかく斬新で、その刺激的な内容のため社会問題にまでなった作品です。
基地の街、福生での酒とクスリとセックスの退廃的な生活が、主人公リュウの視点で描かれます。
エグく思えるほどストレートで尖った描写は、情報に埋もれた現在の著者には絶対に描くことはできないでしょう。
原色のイメージで始まる描写は、クライマックスに近付くにつれてどんどん抽象的になっていき、最後にはタイトル通り無色透明なイメージへと変化していきます。
圧倒的な感情の渦に負けそうになりながら読み切った時は、どっと疲れていました。
分量的には決して長くはないのですが、非常に体力を消耗する読み応えのある小説です。
村上龍を読むなら、とりあえずこれを買いましょう。
ぼく的には、村上龍はこの作品と「コインロッカー・ベイビーズ」の2冊で十分な気がします。極論ですが。
(勿論他にも面白い作品はあります。ただ、面白い作品すべてに目を通すには、僕達に許された時間は短すぎます、余りにも)
ちなみに本作は、1976年に第19回群像新人文学賞と第75回芥川賞を受賞しています。
(2003/9/26)
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/01/09
- メディア: 文庫
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- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/01/09
- メディア: 文庫
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★★★★★→小説とはかくあるべし
村上龍初期の中(長)編作品。
デビュー作で世の中に衝撃を与えた勢いが損われることなくぶつけられ、著者の「小説を書きたい!」という情動が痛いほど伝わってくる力作です。
コインロッカーに捨てられていた2人の少年キクとハシを主人公として、とにかく圧倒的なスピード感で展開される情景描写には、ただただ感服の一言です。
すべての場面が生々しく乾いていて、余りにも裸でありすぎることが時折痛々しくもあります。
その映画的な描写の残像は、読後もずっと印象に残り続け、正に小説とはかくあるべしといった感じです。
デビュー直後の作品でありながら、未だに村上龍の最高傑作だと思います。
ドライで、クールで、リスキーで、だけど不思議にハートフルな本作、必読です。
(2003/9/26)
- 作者: 素樹文生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/07
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★★★★☆→個人的にはかなり好きな作家・作品です
放浪旅行記「上海の西、デリーの東 (新潮文庫)」の番外編的作品。
「上海〜」の作中に登場した様々な場面が、多くの写真とミニ・ストーリーで展開されます。
あまり分厚くない上に、半分以上のページが写真なので、一瞬で読み終わってしまい、ちょっと肩すかしをくらった感じです。
「旅々オートバイ (新潮文庫)」にしろ、この人の作品は放浪的旅行記が多く、それらはいつも、読者を一時の幻想世界へと誘ってくれます。
今回はどんな世界が待っているんだろう、と楽しみにしていただけに、ちょい残念。でも、良い写真ばかりだし、「上海〜」を買った人はそれなりに楽しめると思いますよ。
逆に、いきなりこれ買っちゃうと、なんじゃこれ金返せ状態になるかもしれませんので、「上海〜」とセットでの購入をオススメします。
特に、都会での生活に少し疲れた中年の人は、必読でしょう。
旅行記は山ほどあれど、大体妙に小難しくこじつけようとしすぎてて、この人の作品みたいにシンプルでみずみずしいのはなかなかない。
まだ余り冊数は出てませんが、素樹文生はホント好きな作家です。
(2003/8/27)
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/10
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★★★☆☆→とにかく暗い作品
茨城にいく用事があったので、その帰り道、特急電車の中で読破。
読後感はもう一つ、といった感じ。
何というか、暗い。
こっちまで滅入るような内容でした。
いや、面白いんですけどね。こういう「人間なんて誰もが複雑な事情を背負って生きてるのだ」という事実を殊更に強調しようとする人間ドラマは、どうも最近の気分に合わない気がします。あくまで個人的なことなんですけど。
吉田修一、「最後の息子 (文春文庫)」はかなりハマったんだけどなあ。
楽しみにしてた分、多少残念。
(2003/7/12)
- 作者: 吉行淳之介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1982/05/27
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★★★★★→我が心のバイブル
吉行淳之介という作家の文章を読む時、最も注視すべきポイントは、「行間」です。
そっけない、淡々とした語り口の向こう側に様々な景色や感情が渦巻いており、それを掴むことができるか否かが、吉行作品にハマるかハマらないかの境目だと 思います。
ぼくはビンゴ!でした。
実は、「ノルウェイの森 上 (講談社文庫)」に並ぶMY BEST NOVELがこの「夕暮れまで」です。
しかし、前述した行間を無視すれば、つまり人によれば、ただの三流小説にもなりかねない不思議な作品です。
中年男、若い女、不倫、直接的な性描写、題材だけみれば一瞬渡辺淳一かと思うほどですが、実際の内容はまったく違います。
うーん、言葉で説明するのがとっても難しいんですよね、この作品。
何たって、「行間小説(造語)」ですから。
とりあえず、買って損はないです。と言うか個人的には最大最上にオススメの作品です。
何とも言えない微妙な男女間の雰囲気を、地の文、会話文、そして行間から思う存分楽しめること請け合いです。
(2003/9/26)
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++ from a.s
++ get slow life,
++ and smile.
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